「委員長、余分な意見書はまだ省いていなくて……」

 控えめにリューから声をかけられ、サードは「問題ないさ」と片手を振って答えた。
 生徒会と風紀委員会は、それぞれ意見箱を設置しているのだが、風紀委員会に来るのは、ほとんどが風紀委員長個人を名指しした文句の手紙だった。

 サリファンは風紀委員長に相応しくない、元奴隷が権力を行使するなんて許せない、罰則が厳しい、恋愛は自由だ……。

 そういった批判意見が、風紀委員会の意見箱に毎日、山のように届いていた。意見書はどんな内容だろうと必ずチェックを行い、印鑑を済ませて、その日のうちに理事長に提出するのが義務だった。

 風紀委員長確認の仕事は、意見書だけではない。そのためリューが気を利かせて、時間があれば他の部員と共に、出来るだけ先に重要案件とそうでないものを仕分けてくれるようにしていた。

 サードは、部員たちが囲むテーブルに、大量に置かれている意見書をチラリと見やった。それから、自分の机に置かれている印鑑だけで済む意見書へと視線を戻した。