「俺は風紀として仕事の用が多いだけだ。取り締まった生徒の怪我の手当てと報告も、保健の管轄だろ」

 サードは答えながら、自分がスミラギに懐いているという構図を想像して、微妙な気分になった。

 スミラギは教育係としてサードの足りない知識を補い、行動の指示をする人間だった。衛兵や警備として学園に入っている他の諜報員たちと違うのは、こちらに対して憎悪を見せないことだが、その教育方針はかなりスパルタで容赦がない。

 その時、ぞろぞろと会議室から出てきた他の生徒会メンバーに気付いて、リューが顔を顰めた。ユーリスの後ろ姿に気付いたロイが足を止め、彼の後ろに続いていた他の生徒会役員たちも立ち止まって、揃ってこちらへ視線を向けてくる。

 もうちょっと早めに立ち去れば良かった。
 
 サードは、諦めの心境でそう思った。自由奔放で権力を持って楽しく過ごしている生徒会と、学園側から選ばれ仕事に追われる多忙な風紀委員会は、性質上相容れないものがある。隣のリューの機嫌が降下していくのを、肌で感じてもいた。