会議室を出たところで、すぐ後ろから呼び留められたサードは「へ」と間の抜けた声を上げてしまった。

 振り返ると、そこには昨年から風紀の副委員長を務めている、同学年生のリューがいた。少し癖の入った焦げ茶色の髪をしており、棘のない同色の瞳はショックを受けたように揺れている。

「置いてくなんて酷いですよッ」
「何か用でもあるのか?」

 うっかり忘れていた。マジでごめん。

 サードとしては、副委員長という相棒を忘れていたことについては、「マジすまんかった」と謝罪したくもあった。しかし、その素の口調だと『堅物の風紀委員長の設定』と食い違うかもしれないと思えて、ひとまずは眉間の皺を残したままそう尋ね返す。

 リューはこちらをチラリと見やって、それから、おずおずと言葉を切り出した。

「実は放課後の見回りの件なんですけど、三人体制にすると、委員長が持っている分の書類の処理とかも、色々と間に合わないんじゃないかと思いまして……」
「まぁな。でも春先は変態が多いから、三人がかりで叩き潰した方が早いだろ」