サードは部員にすすめられた『超特大盛りの唐揚げ定食』の食券を買った。カウンターで受け付けた男性コックが、上から下まで見て「食べれるんだろうか」という表情を浮かべた。近くにいた周りの生徒たちから「二回目の注文」「超特大盛り」と小さなざわめきが聞こえた。

 しばらくもしないうちに、注文していた超特大盛りの唐揚げ定食がカウンターに出た。サードは、それをしばし眺め、それから手に持とうとした時――

 不意に、何者かが急速に背後を取ろうとする気配を察知した。反射的に攻撃体勢に入ったサードは、振り返り様、咄嗟に相手の腹に拳を叩き入れて撃沈させた。

 だが、その一瞬後、内臓に鈍痛が走って、痛んだ腹を抱えて「ぐぉぉ……っ」と悶絶してしまった。サードによって床に沈められた相手も、腹を抱えるように転がり込んで「ぬぉぉ」と苦痛の呻きを発した。

「あなた達は、一体何をやっているのですか? 馬鹿なのですか?」
「あ、サリファン君だ~。すごい大盛りの唐揚げだねぇ」
「ユーリス先輩ッ、サリファン先輩は完治していないんですから、こんな時にまで後ろを取ろうとしないでください!」

 続いて掛けられた声を聞いて、サードは生徒会のメンバーかと気付いた。

 腹を抱えたまま床に目を向けてみると、案の定ユーリスが転がっていた。目が合った途端、奴が痛みで汗ばむ顔にぎこちない笑みを浮かべて、どうにかといった様子で震える片手を上げてきた。

「や、やっほ~、サード君……」
「お前、馬鹿だろう。馬鹿だよな? 気配なく回りこむなって、あれほど言ってんのに――くそっ、地味に痛ぇ」
「ごめん。つい、からかいたくなっちゃうというか」

 生徒会の登場に、学食が黄色い声で騒がしくなる。