サードは、考えながらげんなりと窓の方へ顔を向けた。そのまま歩み寄ってきたユーリスが、手を伸ばす。

「ちょっと調べるから、手に触るねぇ」

 そう声を掛けられて「え」と思った。返事をする前には手を取られてしまっていて、サードは触れられた熱に驚いてギクリとした。

 先程まで力なくベッドの上に置かれていた手に、急に力が入った事に気付いたユーリスが、「どうしたの?」と首を傾げた。

「いや、別になんでも……」
「そう? 魔術回路が安定し始めているか中を探るから、ちょっと違和感があるかも――あ。サード君は魔法の素質がないんだっけ」
「まぁ、そういうのは全然ないから分からねぇと思う……。つか、俺、どのくらいで復帰出来そうなんだ? 引き続き風紀やれってスミラギにも言われたし、あまり休みたくないんだが」

 すると、そばにいたソーマが「すぐには無理だと思いますよ」と控えめに言った。

「ユーリス先輩が魔術回路を作った時、刺激された悪魔細胞が活発化して、一時的にその反応を抑え込んだらしいんです。だから、しばらくはいつもみたいに早く完治しないんじゃないかって、外から来た研究員の人達が話しているのを聞きました」