「意地悪だなぁ」
「残念ながら、私は優しくありませんので」

 そう言うと、スミラギはこう言葉を続けた。

「何か欲しいものがあれば、用意させましょう。サリファン子爵、こうしてサードが起きたのですから、約束通り帰ってください。こちらに苦情が殺到していますので、温厚な私の堪忍袋もそろそろ切れそうです」
「う、うむ……。しかしだな」
「早く帰ってください」

 スミラギは、迷うトム・サリファンにきっぱりと言ってのけた。渋る彼に帰りに促しながら、サードへ目を戻す。

「『背中が痛い』『水が飲みにくい』の他に、何かありますか?」
「…………言っても、怒らない……?」
「別に怒りませんよ。病人は、動けないのが『普通』なのですから」

 さあ、どうぞ、とスミラギが言う。

 けれどサードは、これまで経験がなかったものだから、なんだか恥ずかしいような気がして、すぐに答えられなかった。向けられている二人の視線に対して、ぎこちなく目をそらすと、それからようやく「あの、さ」と呟いた。