「温度感覚も戻ったらしいからな。これで舌も火傷しないで済むだろう。今度、川の水が、どれだけ冷たいのか教えてやる」
「サリファン子爵、川に投げ入れる予定は夏まで取っておいてください。むしろ、今回はかなり迷惑を被ったので、私が二人とも投げ入れて差し上げます」

 スミラギが、殺気を込めて予告した。ふと、絶対零度の雰囲気を消してサードを真っすぐ見た。

「あなたも、そのへんにいる子供と同じです。トム・サリファンという口煩い親に叱られて、私という家庭教師に教育指導を受けて、立派な軍人となればいいのですよ」
「聖軍事機関の軍人っていう響きが嫌だ……。あのさ、他の選択肢は……?」
「他に希望があれば、いつでも伺いましょう?」

 スミラギの目が意地悪そうに、けれど僅かに優しく細められる。

 それ以外を知らないのだから、今の自分には何も答えられるはずがない。未来も希望も、想像した事すらないと知っている教育係を見つめ返したサードは、つい顔を顰めてしまう。