暖かな木漏れ日の中、吹き抜ける柔らかな風が心地良い。頭上を過ぎった影に目を向ければ、島に多く生息している鳩が、どこかへと羽ばたいていくのが見えた。

「あ、鳩だ。――鳩だったら、お前のご飯になるかもしれないな」
「にょッ!?」
「でも口が小さいからなぁ、すり潰さないと駄目かなぁ」
「ぴぎゃぁあああッ!」
「猫なのに変な鳴き声だなぁ。俺、猫って『にゃー』って鳴くんだって教わったけど、色々あるんだな」

 叫ぶくらいには、元気が回復したらしい。仔猫の愛らしさに誘われたサードは、そっと持ち上げて膝の上に乗せてみた。

 初めて感じる柔らかくて暖かい感触に、思わず「おぉ」と小さく感動の声が上がった。試しに両腕で抱き締めて頬をすり寄せてみると、ますます離れ難いような気持ちにかられた。

 その際に一瞬、仔猫がギョッとしたように毛を逆立てた。しかし、数秒もしないうちに諦めたように力を抜いて、されるがままになった。引っ掻かれるものばかりだと思っていたサードは、それには少し拍子抜けしてしまう。

「おい、猫ちゃん。猫は引っ掻くものだって教わったのに、お前は引っ掻かないのか?」

 思わず問い掛けながら、肉球に触れて確認してみた。幼いながらにちゃんと爪はあったので、恐らくは大人しい部類の猫なのだろうかと思う。