そうしたら、トム・サリファンが鼻をすすって、どこか偉そうに「ふふんっ」と腕を組んだ。

「あの屋敷は別邸の一つだ。王都に本邸があるから、住居はそこに移す。信頼のおける使用人ばかりだから、必要なものは色々と教えてくれるだろう」
「ふうん。じゃあ俺、そこで下働きをすればいいのか?」
「は……?」
「力仕事なら得意だぜ。引越しなら、家具の搬入も俺がやった方が早いだろ?」

 トム・サリファンが、間の抜けた人形のようにポカンと口を開けている。サードは不思議に思って、続けてこう確認してみた。

「つまり養子設定で、衣食住の面倒をみるってやつなんだろ?」

 すると、その様子を見ていたスミラギが、なんとも言えない表情を浮かべた。

「理解が十分ではないようですね。いいですか、この件に関しては『月食の悪魔』の歴史だけでなく、国が『処分』の一つで隠蔽しようとしていた事実についても、理事長が生徒たちに公表しています。いくつかの詳細については、国王陛下と『皇帝』との取引で伏せてはいますが」