とはいえ何かある時は、誰かに訊くのが一番だ。一番身近にいる自分の教育係を思い浮かべたサードは、仔猫を片腕に抱え直すと、座っていた幹からひょいっと飛び降りた。

 校舎三階ほどの高さしかないのだが、仔猫は高所が駄目なのか、地面に着地するまで悲鳴を上げていた。着地した途端、腕の中でぐったりしてしまう。

「えッ、もしかして抱き潰しまちったのか? どうしよう、そういえばコイツ、すごい柔らかいもんな!?」

 サードは、慌てて仔猫を下の芝生の上に横たえた。殺す技術しか持ち合わせていなかったから、この場合にどうすればいいのか分からず「どうしよう」とうろたえた。

 その時、仔猫がゆっくり身を起こした。ぐったりとしてはいるものの、怪我はないらしい。全身を小刻みに震わせていることから、どうやら高所からの落下について精神的なショックでも与えてしまったようだった。

 無理に動かすのも可哀そうに思えたので、サードは仔猫をすぐには触らず、しばし観察することにして木の下に腰を落ち着けた。