呼吸がひどく苦しい。スミラギの隣には、不安そうな顔をしたソーマの姿もあった。彼が何事か後ろの人間に言っている様子が見えたけれど、聴覚は鈍くなってしまっていて、ほとんど聞き取れなかった。

「…………なんだ、スミラギ。ちゃんと来てくれたのか」

 そう口を開いたサードは、自分の声が掠れ、絡むような水音を含んでいる事に気付いた。

 既に吐血が始まっているのだろうか。身体の感覚は一部鈍ってしまっていて、口の中の感覚がよく分からない。視界は霞んで、呼吸もしづらかった。

「――サード。サード、聞こえますか」

 すると、スミラギがしゃがんで、耳元でそう言ってきた。

 どうやら、先程から声を掛けていたらしい。サードは「今、聞こえた」と短く答えた。その際に妙な咳が込み上げて、口周りをどろりと汚してしまったような気がしたものの、やはり自分ではよく分からなかった。

 腹の辺りに不快感は続いているが、そこに剣で貫かれた時のような痛みはなかった。視界の隅に映り込む自分の手が、僅かに震えているのが不思議なほどだ。