そんな事は出来ません、どうかお許し下さい、最期は私達で処理致しますので、どうか、どうか見逃してください……――最後の一人になった仲間を見届けた研究員達が、偉い研究者の男に向かって、跪(ひざまずい)いて頭を床に擦り付けていた風景が思い出された。

 体中から血を流す少年を、彼らは泣きながら付きっきりで看ていた。そして少年は、こちらを見て微笑んで「ごめん、先に逝くね」と唇を動して、死んだ。

 何気ないワンシーンが、次々にサードの瞼の裏に蘇っていった。どうしてか、初めて地上に出た日の事も思い出した。

 実験で睡眠欲と食欲のほとんどを失っていたから、トム・サリファンの屋敷で食べ物を出された時、サードは『ソレがなんであるのか』分からなかった。彼の真似をして素手で口に入れてみたら、胃が受け付けずに吐いた。

 いつも食べている『乾燥フード』と『サプリメント』をくれと言ったら、トム・サリファンは怒ったように「これを食べなさい」と水気の多い料理を作って出した。