けれどロイは、勝手に断言して満足したのか、それとも怒りが爆発する前に言葉を切ったのか、どちらともつかない黒い笑みを深めて顔を離していった。

 その様子を見守っていたユーリスが、「諦めなよ、サード君」と苦笑して言った。

「俺としても、君以上に『風紀委員長』にぴったりな人もいないと思うよ。すごく根が真面目で、びっくりするくらい働き者だよね。ってことでよろしく、未来の同僚」
「誰が未来の同僚だ。ぶっ飛ばすぞ」

 間髪入れず言い返したら、エミルが「サリファン君、意外と元気だねぇ」と女の子みたいな可愛らし
笑い声を上げた。

 彼らは、まるで普段通りの様子だった。この状況を理解しているのだろうか、と錯覚してしまいそうになるくらいだ。

 それでも、上手く装っているだけなのだろう、とも分かっていた。彼らは嘘が上手なようでいて、こんな時に限って下手くそだ。

 会長のロイは普段みたいに「見事な白髪だな」とも言わず、レオンも冷ややかな喧嘩の言葉も売ってこなくて。ユーリスとエミルもどこか空元気で、彼らは思いつめた表情を隠すように視線をそらしてじっとしてしまう。