問題の木へと向かった。そこから見上げてみると、木の頂上付近の幹に挟まれるように、灰色の仔猫の身体が埋まっている様子が確認出来た。

「よっと」

 小さな掛け声を合図に、己の高い跳躍力を利用して木の上へと登った。あっという間に辿りついたサードを見て、子猫がギョッとしたように目を剥く。

 まるで人間みたいなやつだな。そう思いながら、サードは仔猫の鳶色の瞳を見つめ返し、敵意はないぞと伝えるようにして声をかけた。

「ほら、怖くないって。俺が下まで連れてってやるから、おいで」

 以前町に出た際、野良猫に向かって「ちっちっち」とやっていた少女の姿を思い出した。それを真似て誘って呼んでみたものの、仔猫は震えるばかりで動く様子がない。

 腰が抜けているのかもしれないと思って、そっと手を伸ばしてみた。

 警戒心が薄いのか、すんなりと仔猫に触ることが出来た。予想以上に毛並みは柔らかくて、持ち上げてみると、これまで持ったどんな物よりも軽くて小さいことに驚いた。

「うわぁ、何これ。柔らかいしあったけぇなぁ」