「疲れたねぇ」
「もう駄目、体力もたない」

 ロイによって戦いの終了が告げられると、ユーリスとエミルが、わざとらしいくらい大きな声で言葉を交わしながら近くに腰を下ろした。

 百年ごとに続いていた、悪魔との戦いが終わった。
 
 二人の声を聞いて実感させられたサードは、もう二人だって勝手に座ってしまっているのだと、自分もその場に腰を落ち着けた。超治癒再生によって腹部がじわじわと回復されていくのを感じながら、そのまま仰向けに横たわる。

 痛みは、半ば遠く離れた感覚へと戻り始めてもいた。感じていたはずの心地良い疲労感も、どこか曖昧になっていくのは死が近いせいだろうか。それとも悪魔細胞の稼働が、じょじょに落ちていっているせいなのか分からない。
 
 もう時間は止まっていないようだった。空に見える黒い太陽は、次第に光を取り戻すようにゆっくりと動いていた。

 もしかしたら青空が戻る光景までは、この目で見られたりするのだろうか、と期待も絶望もせずに思った。