ロイが剣を引き抜き、レオンとソーマがそれに続いた。
合図もなく剣を引き抜かれて、サードは思わずよろめいた。どうにか両足を踏みしめて転倒を回避し、腹にあいた穴をゆっくり手で押さえる。
腹部を押さえた手が、あっという間に溢れた血で温かく濡れた。それを見たソーマが、剣を放り投げて泣きそうな顔で走り寄ってきた。
「サリファン先輩ッ、だ、だだだ大丈夫ですか?!」
「……お前、魔獣に吹っ飛ばされても……けほっ…………剣を手放さなかったってのに……。剣は大事な物だって、トム・サリファンが言ってたぜ」
いや、そんな事が言いたいのではないのだ。よくやったなと、褒めるように彼の灰色の頭へと手を伸ばし掛け、――自分の手が、血に塗れていることに気付いてやめた。
サードは目をそらした。お疲れ様、と言おうとして、開いた口からこぼれたのは「疲れた」という吐息混じりの本音だった。けれど、いつものように言葉を茶化してくる人間はいなかった。
「よくやった」
ロイが笑いもせず、低い声で全員に向かってそう言った。それでも、しばらく誰もが答える言葉が思い付かない様子で、視線をそらして黙っていた。
その沈黙を数秒ほど聞いていたエミルとユーリスが、「みんな、お疲れ様!」と無理やり明るい声を出して、場の空気を変えるように動き始めた。
合図もなく剣を引き抜かれて、サードは思わずよろめいた。どうにか両足を踏みしめて転倒を回避し、腹にあいた穴をゆっくり手で押さえる。
腹部を押さえた手が、あっという間に溢れた血で温かく濡れた。それを見たソーマが、剣を放り投げて泣きそうな顔で走り寄ってきた。
「サリファン先輩ッ、だ、だだだ大丈夫ですか?!」
「……お前、魔獣に吹っ飛ばされても……けほっ…………剣を手放さなかったってのに……。剣は大事な物だって、トム・サリファンが言ってたぜ」
いや、そんな事が言いたいのではないのだ。よくやったなと、褒めるように彼の灰色の頭へと手を伸ばし掛け、――自分の手が、血に塗れていることに気付いてやめた。
サードは目をそらした。お疲れ様、と言おうとして、開いた口からこぼれたのは「疲れた」という吐息混じりの本音だった。けれど、いつものように言葉を茶化してくる人間はいなかった。
「よくやった」
ロイが笑いもせず、低い声で全員に向かってそう言った。それでも、しばらく誰もが答える言葉が思い付かない様子で、視線をそらして黙っていた。
その沈黙を数秒ほど聞いていたエミルとユーリスが、「みんな、お疲れ様!」と無理やり明るい声を出して、場の空気を変えるように動き始めた。