一言も発しないまま、レオンとソーマが確実に悪魔を殺すべく剣を抉り込んだ。正面から悪魔の心臓を貫くロイも、更に刃先を押し込むように力を入れてくる。

 腹を貫く剣が、更に熱を帯びたような気がした。これが聖なる力なのだろうか。そんな事を考えながら、サードが「こほっ」と小さく咳込んで血を吐き出したら、その声を拾った悪魔が、こちらへのんびりと目を向けてきた。

「『痛い』のかい、少年?」
「…………ああ、本当に『痛い』な」

 悪魔に答えるように、サードは声を絞り出してそう呟いた。

 久しく感じていなかった強烈なその痛みは、どこか新鮮でもあった。痛くて苦しくてたまらないはずなのに、ようやく自分が生きているような実感が込み上げた。

 胸の底から、途端に言葉にならない感情が溢れた。痛みに歪んだ左目から、苦しくて生理的な涙がこぼれ落ちる中、このまま死ねたのなら、さぞかしよく眠れるだろうにと思ってしまう。

 すると悪魔が、「ふふ」と笑みを含んだ声をもらした。

「そうか。お前は『半分同族』であったか。ああ、久しく楽しかったぞ。他の同族もなく、永(なが)らく独りで過ごしてきたが、とても、とても面白かった――」

 満足げな息を吐き出して、悪魔が目を閉じた。その心音が止まると共に、全ての機能が停止した肉体がボロボロと黒い灰となって崩れ出した。