「――お前、余裕なんだな。あの剣は悪魔を殺せるんだろう?」
「ふふふ、そうだよ。あの剣は『悪魔』に、焼けるような苦しみと痛みを味あわせるのさ」

 サードは「他人事なんだな」と答えながら、ロイ達が駆け出して、こちらへと向かって来る様子へと目を戻した。念のため、悪魔を拘束する力を更に強める。

 そうか、苦しくて痛いのか。

 ふと、そんな独白が脳裏を掠めていった。思い返す限り、死ぬほどの痛みがどういうものであったのか、もう覚えていない。

 その時、ロイの剣が悪魔の心臓を深く突き刺さした。直後、レオンとソーマが悪魔の脇腹から剣を突き入れて、確実に仕留めるようにして悪魔の両肺を切断する。

 その剣先が、肩の肉を貫いてサードの顔の左右に突出した。余裕さえ感じる表情を変えないまま、悪魔が小さく咳込むような吐息をもらして、赤い唇の端から鮮やかな血を一筋こぼし落とす。

「この剣は、『神に見放されたモノ』を苦しめる――」

 悪魔が独り言のように言いながら、ゆっくりと肩越しに振り返り、サードを見て楽しげに目を細めた。

「――だというのに、どうして『お前にも剣が効いている』のだろうね? 今、『痛み』で、一瞬だけ拘束が緩んだよ?」