それがどういう意味なのか、今も理解出来ないでいる。地下施設での地獄を繰り返さない。それだけでは、何が足りないというのだろうか?

 そう考えながら歩いていたサードは、回廊を抜けてすぐの窓の外に目が向いて「ん?」と首を捻った。

 人間の視力よりも格段に性能の高い、悪魔と同じサードの赤い双眼が、窓の向こうに茂る木の葉の隙間から覗く仔猫の動きを捉えた。震えている様子を見る限り、どうも降りられなくなってしまったらしい。

 猫という生き物については、町中でちらりと目にしたことはあった。小さくて可愛くて、守ってやりたいと思わせるような小動物だと思う。

 生徒でなくとも、守るのが風紀の役目だろう。

 という建前を全肯定したサードは、仔猫に触れたい一心で直後には窓を開け放っていた。冷房の利いた校舎内で、窓の解放状態が続くことは望ましくはない。しかし、仔猫助けが優先である。

 窓枠に足を掛けて、三階下の校舎裏まで飛び降りる。木から「みぎゃああ?!」という声が上がるのを聞きながら、サードはクルリと回って芝生の上に問題なく着地した。