「美味いのかい?」

 クソまずいに決まってる。サードは、悪党じみた笑みを浮かべた。

 一秒でも遅れてを取った方が負ける。互いの爪と牙と拳でぶつかり合い、サードと悪魔の戦いは止まらなかった。

 吹き出した血が飛び散る中、動き続ける悪魔の身体は驚異的な速さで傷が癒えた。サードの身体は、半悪魔体としての限界を超えて、出血が多い個所はとくに集中して超治癒再生が働き、表面上の傷口を閉じる。

「なんて無茶苦茶な戦いなんだ……」

 手も足も出せず見守っていたユーリスが、呆けたように呟いた。

 サードと悪魔は、目をそらさないまま互いに一旦距離を置いた。着地と同時に、コンクリートを破壊するほどの力で再び突進し、激突して、爪と牙で互いの血肉を削ぎ合った。

 どれほど戦いに没頭していたのか分からない。ただひたすら、チャンスを待って攻撃を続けていた。

 悪魔が脇腹を切り裂いて、サードは悪魔の左腕を切断した。

 その時、悪魔が一瞬にして消えた腕へ目を向けて「おや」と楽しげに言った。ようやく出来た隙だ。サード身を屈めると、悪魔の両足を容赦なく切断していた。