「動きは見えたから、僕は平気だよ~」

 この戦いを俺に譲ってくれねぇかな、という気持ちがあったのだが、大剣を担ぎ直したエミルが間髪入れず「えへへ」と緊張感なく笑ってそう言ってきた。

 その時、レオンが、向こうからやってくるロイに気付いて振り返った。ユーリスとソーマも、彼の姿を目に留めて手で応えたが、こちらを見た彼の顔が途端に強張った。

「全員ッ、迎撃用意!」

 ロイの鋭い指令が飛んだ。生徒会メンバーは直後には剣を構えていたものの、校舎の瓦礫から飛び出してきた悪魔は、彼らが攻防体勢に入るよりも速く眼前に迫っていた。

 悪魔の赤い目が、真っ直ぐ捉えていたのは一番近いレオンだった。

 やはり生身の人間の行動は遅すぎる。サードはそう口の中に吐き捨てると、標的になった彼の前に滑り込んだ。迫りくる悪魔の右手には黒い剣が握られており、左手は、まるでこちらの行動を予想していたと言わんばかりに、爪が構えられていた。

「いいよ、いいねぇ。楽しくなってきちゃった」