「ん~? お前――」

 サードの赤い瞳を覗き込んでいた悪魔が、同じ色をした同じ瞳を、愉しげに細めた。

「珍しいね。魂に名前がない。神の加護は、魂に刻まれるはずだけれど――つまりお前には、神の加護がない。どうして?」
「ハッ、んなの知るかよ。生憎、俺は『神様』なんて信じてない。お前に名前はないのか、悪魔?」
「私は『悪魔』さ、それ以外の何者でもないよ」

 お前こそ変な事を言うね、と悪魔は悠長に述べる。

「君、私の事を殺したくてたまらないって目をしているね。こちらから『盛り上げて』やらなくとも、憎悪のような殺意が完成されちゃっているなんて、とっても素敵だなぁ」

 これまで自分が楽しむためだけに『宣誓契約』外の人間を、わざと血祭りにあげた事も多々あった、というようにも聞こえる台詞だった。

 快楽的な殺戮衝動というのも、こうして見ると結構厄介なもんなんだなと、サードは今更のようにそう思った。チラリと目を走らせてみると、向こうにいるロイが、間合いを測りながらこちらの様子を窺う様子が確認できた。