「サリファン先輩、これは教会で神聖な魔力を注がれて作られたなん剣です。ですから魔力を引き出して発動すれば、どんなに強度がある魔物も容易く『焼き斬れる』んですよ」

 つまり悪魔にとっては、彼らの剣は大敵となる武器でもあるらしい。抵抗なく肉や骨を断てる事もあって、先程の強靭な身体を持った巨大な『死食い犬』も、あっけなく急所を貫けて絶命させる事が出来たのだろう。

 その時、耳朶に触れるくらい近くから、サードの耳に一つの声が落ちてきた。

「面白いなぁ。まるで人間じゃないみたいな殺戮っぷりが、とても良いなぁ」

 反射的に声がした方へ目を走らせてみると、透明な足場に膝を折った悪魔が、黒い剣を片手に担いだ姿勢でこちらを覗き込んでいた。鮮やかに光る赤い目が、好奇心たっぷりに見開いて鈍い光を帯びている。

 目が合った瞬間、サードは高揚感にゾワリと総毛立つのを感じた。

 こいつを殺して食らい付きたい。たとえ自分よりも強い存在だとしても、この命尽きる前に嬲り殺してやりたい……その本能から、知らず口角が引き上がる。