人気のない廊下は静寂に包まれていた。暖かな春の日差しにつられて、サードは窓の向こうに広がった青空へと目を向けた。

「……いい天気だなぁ」

 ふと、初めて青空を目にした時のことが脳裏に蘇った。

 こんなに綺麗なものがあるのかという感動は、今も薄れずに残っている。色鮮やかで見飽きず、何度だって、こうして目を向けてみたいと思うのだ。

 ずっと見ていると、まるで懐かしいような、胸がぐっとつまるような不思議な気持ちがした。仲間でもあり、兄弟でもあった同じ半悪魔体の少年たちと同じ血が、彼らがとうとう見ることも叶わなかった眩しい色彩に惹かれるのだろうか。

 もう一度外を見てみたいと、外から連れて来られた別の少年が小さく呟いていた。彼はサードの向かいの檻にしばらくいて、「悪魔の血に少しでも適合すれば、もう少し長く生きられるよね?」と泣きながら笑い、その翌日に不適合で死んだ。

 もし失敗したら、また百年後に向けて同じことが繰り返される。

 だから、必ずやり遂げなければない。