「うふふふ、これはまた『容赦がない』。お見事だよ」


 どこからか、そう言って嗤う悪魔の声が聞こえた。

 魔獣が完全に動かなくなったことを確認したところで、サードはようやく、自分が新たにひどい返り血を浴びている事に気付いた。皮膚による温度感覚もなくなってしまっている今、両手を赤黒く染めている血飛沫の実感も薄い。

 運動場内の複数個所で、破壊音と土埃が上がっていた。他のメンバーの安否確認をしなければ、と思い出し、ハタと我に返って駆け出した。
 
 そういえばとソーマの様子を確認してみると、彼の方も既に決着がついていた。長い舌を出して横たわる『死食い犬』の脳天には、頭の上に立った彼の剣が脳天に深々と突き刺さっている。

 その時、サードは次の一歩を踏んだ足元から、カチリ、と上がった機械的な音を聞いて「え」と引き攣った声が出た。

 その踏み心地は、掘り返された感満載の柔らかさだった。どうやら『何かが埋められて仕掛けられている』ようだ、と気付いて血の気が引いた途端、地面から眩い光が放たれて反射的にどいた。

 直後、大きな爆発が起こり、サードはその爆風に巻き込まれて呆気なく数メートルも宙を飛んだ。