ざっと見たところ、折れた骨もないようだった。ひとまず命に関わるような負傷はしていないと知って安堵の息がこぼれた時、ソーマが痛みに顔を顰めつつ目を開けた。苦い表情を浮かべ、くらくらとする頭を押さえて上体を起こす。

「すみません、サリファン先輩。スピード負けしてしまって……」
「しょうがねぇよ。予想以上に馬鹿力で、頑丈ときた」
「お恥ずかしい話なのですが、俺は魔術が未熟で……咄嗟の事で、剣の魔力を発動するのに遅れを取ってしまいました」

 聖剣としての本来の力を発揮するためには、そうする必要があるらしい。

 反省するように言った彼の右手は、引き続き剣の柄を固く握り締めていた。どんな状況に陥ろうと、武器だけは手放さないという覚悟が表れているような気がした。

 サードは、重々しい衝撃を受けて割れて窪んだ場所へ目を向けた。二頭の巨大な『死食い犬』が、体勢を整え直そうともがき始めていて「頑丈だなぁ」と呆けた声で呟いてしまう。