先程の一撃目で、彼は片目に血がかかってしまうほどの怪我をしたのだろうか。このままだと、次の一撃でソーマは地面に叩きつけられるか、そのまま食われてしまうだろう。

 サードは舌打ちすると、目の前の『死食い犬』の豊かに波打つ黒い尻尾を両手で掴んだ。雄叫びを上げながら力任せに引き寄せると、暴れ出そうとした魔獣の尻尾を掴んだまま地面を蹴り上げ、その巨体を引き連れて宙に飛び出した。

「ッさせるかぁぁあああああ!」

 サードは持ち上げた魔獣を、ソーマを狙う『死食い犬』目掛けて全力で投げつけた。体重のある仲間の身体を砲弾のように打ち込まれた巨大な魔獣が、衝突音と激しい土埃を上げて地面に沈む。

 どこからか、「マジか」「規格外過ぎる」という声が聞こえたような気がした。サードは声の主を探す余裕もなく、慌てて走り出すと、落ちてきたソーマを間一髪で受けとめて地面の上を転がった。

「おい、大丈夫か!?」

 腕の中で身じろぎするのに気付いて、様子を確認すべくガバリと身を起こした。こめかみにある傷口から出血はあるものの、大きな怪我ではない。