ソーマが、不安な表情で答える。そうしたらレオンが、秀麗な眉根を寄せて「はぁ」と額に手を当てた。

「困った人です。ありったけの火薬でもつぎ込んだのでしょう」
「会話が既に物騒過ぎる」

 サードは眩暈を覚えた。

             ◇◇◇

 エミルを探すため、サード達は大広間を抜けて運動場に向かって駆けた。魔獣の生き残りがいないか目を走らせたが、断ち斬られた死骸ばかりが転がっていた。

「日食の様子を見る限りでは、あれから数十分も経っていないようだけれど、既に時間経過が鈍くなっている気もするんだよね」

 走りながら、ユーリスが思案するようにそう言った。

 頭上の太陽は、もう八割以上欠けてしまっている。しかし体感としては、三時間ぶっ通しで戦い続けているような気がしないでもない。

 同感だと口にして頷いたサードが、続けて問うように目配せすると、視線を受け止めたユーリスが「うん」と考えるような表情でこう言った。

「敷地一体が、強固結界で閉ざされている中で、大量の魔獣が一斉に降り立っただろう? 恐らく魔獣の持つ瘴気の濃度が、一気にはね上がったせいで、時間経過が外界と遮断されつつあるんじゃないかと思うんだ」