不満だと言わんばかりの顰め面をしているサードを前に、ユーリスは「どうしたものかなぁ」と呟く。

「僕はね、別に君を怒らせようとしているわけじゃなんいだよ」

 貴族しかいないこの学園では、どうしてもサードの不器用過ぎるスプーンの持ち方一つでさえ目立った。一般的に見れば、そこまでは酷くないのだろうけれど、まるで幼少の子供が拙い食べ方をしているように映ったりもする。

 相手が彼でなければ、悪目立ちもそこまで酷くなかっただろう。完全無敵で『隙のない漢らしい風紀委員長』として凛々しいサードだからこそ、意外過ぎて見ていた全員が目を剥いた。

「まぁ、そういうこともあって、君には色々と謎が多いような気がしてさ。親しい友人を作る様子もなかったし、授業にも参加しなかったから情報が少なくて、半年くらいずっと正体不明の違和感だけが残っていたんだ。――これは本格的におかしいぞ、と思ったのが、雪が本格的に積もり出した日に、中庭にいた君が、警備の人に声を掛けるのを見た時かな」