ユーリスが話すそばでは、レオンがこちらの様子を見守りながら仁王立ちしていた。まるで魔獣がこないかを確認するかのように、時々辺りに目をやる。

 素人にとって対処の難しい『死食い犬』も、この日のために鍛練を重ねてきた彼らにとっては強敵ではないのだろう。だからユーリスは、メンバーの代表のように、今のうちにこちらと話すことにしたのかもしれない。

 任務の失敗は許されない、きちんと遂行しなければならない。つまり勝手に飛びこんできたとはいえ、彼らに大怪我をされたらアウトだ。

 サードは、眉間に皺を寄せて考えた。揃いも揃ってクセが強く、こちらの言うことなんて聞かないような人間だ。彼らが殺されないよう注意しながら、当初の計画通り悪魔を倒さなければならない状況を想像すると、頭が痛い。

「サード君のプロフィールを調べると、君は十歳くらいまでにはサリファン子爵に救い出された、とある。そこから手厚い教育を受けているというのに、礼儀作法の一つもまともに出来ていない点も気になったんだ。実際、入学したばかりくらいに君が学食で食べている姿を見た時は、びっくりしちゃったよ。なんか、こう、ワイルドに食べてるなぁ、というか……」

 これまでスムーズに話していたユーリスが、そこで初めて言葉を詰まらせて、ぎこちなく視線をそらしていった。

 違和感なく学園生活に溶け込むため、サードは入学から一週間ほどは、理事長の指示で他の生徒たちと同じ時間帯に学食を利用していた。

 箸やウォーク、スプーンやナイフの使い方を、半年間訓練していたものの、慣れず苦戦する様が伝わる食べ方だったようだ。リューにも「独特ですね」と言われたことは覚えている。

 そこまで酷い使い方はしていないつもりだったが、学園の生徒として溶け込むどころか悪目立ちしている気がして、結局あの日以来、食堂へは寄らず購買のオニギリかパンで栄養補給を済ませていた。

 それを思い返したサードは、「悪かったな、不器用で」と唇を尖らせた。