「君の過激な防衛反応は、元戦闘用奴隷であるからだ――と誰もが信じて疑わなかったけど、少し考えてみるとさ、たとえば十歳そこいらで救い出されたのであれば、あそこまで高度な暗殺術を身につけていないはずなんだよねぇ」

 まだ『死食い犬』を全部倒していない中、へたをしたら怪我をするかもしれない『次期皇帝』やら『聖騎士の子孫たち』が好き勝手に動き回っている状況で、無駄な時間を消費するような立ち話を続けられてもたまらない。

 さっさと本題に入らないユーリスに対して、サードは沸々と苛立ちが込み上げた。低い声で「おい、会計」と呼んでギロリと睨みつけた。

「黙っていれば言いたい放題だな。そんな暗殺術なんて、俺はお前に披露した覚えはねぇけど?」
「俺は君に接近する際に、魔法で気配を完全に断っている。その状態で人間を感知するには、心音、熱、僅かな風の動きだけで捉える方法があるけど、俺が知る限り、十年そこいらで身に付けられるものじゃない。俺も戦闘系の魔術師として訓練は受けているけど、サード君の技は、どれも一瞬で相手を再起不能に出来る穏やかじゃないものばかりだ。――まぁ、いつも君自身が、ギリギリのところで止めてくれているわけだけれど」