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 風紀委員室に戻ると、指示内容の書かれた紙切れが引き出しに入っていた。それに目を通したサードは、五時間目の授業が始まってしばらく経った頃、理事長室の応接間を訪れた。

 学園の校舎は、授業棟と専門教室のある別棟が回廊で繋がり、校舎中央に図書室や講堂が設置されていた。一階に保険室と職員室を置いた授業棟の四階に生徒会室、別棟の四階に風紀委員室、そして中央四階の大会議室を抜けた先に理事長室が存在している。

 理事長は、固い皮張りの三人掛けソファに腰かけていた。ほどよく引き締まった身体をしており、その容姿は五十代になったばかりには見えないほどに若い。長い黒髪と黒い瞳を持っており、国王陛下の従兄弟にあたる人物でもあった。生粋の黒髪黒目は、この国には王族の他にはいない。

 彼が腰かけるソファの後ろには、学園の守衛である、騎士団に所属する二人の若い男が帯刀した状態で直立していた。

「前年同様に、生徒会の人間は特別室での検診になるだろう。風紀委員会は健康診断の誘導と管理にあたり、前年通り交代で検査に入ってもらう」