「キュ?」

 二本脚で歩いていた珍妙で可愛らしい生き物が、不服そうな鳴き声を上げてこちらを振り返った。

 すると目が合った瞬間、その生物は激昂するように耳を立てて、罵倒するような呻きを上げて地団太を踏み始めた。まるで「なんでお前がいるんだよ」と言い返されているようで、サードは複雑な心境を覚えた。

 なんで、俺が非難されているのだろうか?

 その時、ふっと太陽の光りが弱くなった。欠け始めた太陽と共に、視界がワントーン暗くなる。頭上から無数の咆哮を伴って黒い何かが押し寄せてくるのが見えて、サードは小さく舌打ちした。

「チッ、――いいか『ちっこいの』! ちょっと後ろに下がって、大人しくしてろ!」

 サードは、力加減を最小に留めて、可愛い小動物を片手で掴むと、そのまま生徒会室のソファに向かって放り投げた。


 直後、一際高い咆哮が近くで上がり、窓ガラス震えて一斉に内側へと砕けて吹き飛んだ。


 圧縮された空気の衝撃波だ。咄嗟に両手でガラス片から身をかばったサードは、瞬時に体制を立て直し、『敵』へと目を向けた。