日食まで、そう時間もかからないのだろう。そこをじっと見つめていると、首の後ろにチリチリと刺さるような気配を覚えた。

 サードは小さく息を吐くと、手に持ったままだった『皇帝の首飾り』をジャケットのポケットに押し込んで歩き出した。

「肉体活性化、解放三十パーセント」

 先程出た別棟校舎の裏口へと足を進めながら、これから起こる最後の戦いのために、じょじょに解放数値を上げるべく肉体の準備を開始する。一気に全開放してしまうと、身体の半分に流れる人間の細胞の方が耐えられない。

 少しでもエネルギーを取って蓄えておこうと考え、ついでに残っていた『悪魔の血の丸薬』を全て手に取り出し、思い切り噛み砕いた。

 相変わらず『悪魔の血の丸薬』は、血生臭くて美味しくない。けれど悲しいことに、喉元を過ぎると「美味だ」と本能的に空腹感や乾きが満たされるのも確かで、サードはちぐはぐな身体を虚しくも思って深い溜息をこぼした。

「肉体活性化、解放五十パーセント――。更に六十パーセントまで解放」