正門を出た場所で、背後から騎士に拘束されたロイが、忌々しげに理事長を睨み据えた。

「どういうつもりだ」
「時間がない、と私は言った」
「理事長、俺は暴れてないのでもうちょっと優しくもらえませんか?! 腕がすごく痛いんですけどッ」

 ユーリスが引き攣った笑顔で主張したが、理事長は目も向けなかった。数秒ほどロイを見据えた後、近くの魔術師に向かって淡々とこう告げた。

「生徒は全員外へ出た。速やかに『強固結界』の展開を用意しなさい」
「了解しました。これより、術式発動に入ります」

 一人の魔術師が大きな声で答えると、学園の柵沿いに待機していた他の魔術師たちが動き始めた。低い声で唱えられる呪文によって、魔術装置が稼働し淡い光を帯び始める。

 サードは計画の内容で、魔術の展開が発動完了するまで五十秒あることを知っていた。自身の胸の中でもカウントを開始すると同時に、騎士によって押さえ込まれているロイの前に飛び出した。

「ちょっとごめんな!」