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 待機場所に到着したサードは、生徒たちが順調に正門から出ていく様子を、死角となっている桜の木の影から窺った。

 到着した時、正門の内側に立っていた守衛や理事長と一瞬目が合ったが、すぐにそらされた。彼らは特に合図を返す訳でもなく、正門の外へ出るために歩いてくる生徒たちから、こちらの存在を隠すように少し立ち位置をずらしただけだった。

 つまり、合図待ちというわけか。

 サードはそう察して、彼らから何かしら指示(サイン)が出るのを待つことにした。

 校舎の敷地を外側から取り囲む鉄柵には、一定の距離を置いて、軍服の上から丈の短い黒いローブを付けた魔術師や、白を基調にした国家騎士団の軍服に身を包んだ騎士たちが並び立っていた。

 彼らの足元には、物々しい魔術装置も配置されており、生徒たちは普段とは違う訓練の様子に戸惑いを隠せず、小さな声で疑問を囁き合っている。

 事情を知らない教員たちも、困惑したような表情を浮かべていた。学年主任らしき男が、理事長に何事だろうかと質問するのが見えた。