それならば校舎外に出て欲しいものだと思いながら、仔猫のそばにしゃがみ込んで「ちっちっち」とやった。すると気付いた仔猫が振り返り、こちらの腕の中にいる珍妙な生物を見て、ギョッとしたように固まった。

 やはり、コレは珍しい生き物なのだろうか。サードは不思議に思いながら、「警戒しないでも大丈夫だぞ」と仔猫に声を掛けた。

「変な生き物だけど、爪も牙もないみたいだから害はないっぽい。ところで、なんでお前は校舎内にいんの? 入ってきたら駄目だろ?」
「に、にょー……」
「ほら、こいつと一緒に出してやるから、こっちにおいで」
「にょ!? にゃぁあああああああ!」

 灰色の仔猫が、明るい鳶色の目を見開き、全力拒否するように首を激しく左右に振った。

 サードは、滑り落ちそうになった、毛と肉の塊のような腕の中の生き物を抱え直して首を傾げた。

「抱っこされるのが苦手なのか? でも、出てくれないと困るんだよ」
「にょ、にょにょにょ、にゃーんッ」
「ん~。何を言っているのか、さっぱり分からん」

 そう首を捻った時、腕の中の生物が仔猫に応えるように「キュィ」と小さく鳴いた。目を向けてみると、仔猫と奇妙な動物が見つめ合っている。

「……もしかして、お前ら会話出来んのか?」
「キュッ」
「つか、お前も人間みたいな変な動物だなぁ」

 サードは、こちらを振り返って頷き返してきた、奇妙で愛らしい生物に感心した。仔猫が腕を控えめにつついてきたので、もしやと思って珍妙生物を床に降ろしてやると、二匹はあの非常口に向かってゆっくりと歩き出してくれた。