「うわぁ、鼻と耳がピクピクしてる。お前それ、すごく可愛いな」

 思わず呟くと、途端に奇妙な小動物が上目に睨んできた。

「そんなに怒っても、可愛いまんまだぞ」

 言いながら、つい、腕の中に収まった生き物の柔らかい頬をつつく。そうしたら腕の下に力なく下がっていた足が、調子に乗るな、と言わんばかりにこちらの腹を数回打ってきた。

 サードは触れ合いを諦め、奇妙な形をした可愛い動物を片腕に抱え直すと、足早にそこを走り抜けた。進んだ先には、校舎内警備室の控え部屋もあったが、そこは既に無人だった。

 そのまま直進して警備室前を通り過ぎ、西棟の非常口を目指した。しかし、またしても廊下の中央に小さな生物を見付け、サードは立ち止まってしまった。

 それは校舎裏で見掛けた、あの灰色の仔猫だった。仔猫は慌てているのか、困り果てているのか、廊下の中央で小さな円を描き続けるように走っている。

「何これ。すげぇ遭遇率なんだけど?」

 これはもしや勘の鋭い動物が、悪魔が来る異変でも察して、パニックを起こしているのだろうか。