少し加減は難しいが、ガタがきたままの身体でいるより、十パーセントほど解放している方が肉体の都合もいいだろう。『サード・サイファン』の振りをするのも、あと少しで終わるのだから。

 その時、小さな鳴き声が聞こえて、ふっと我に返った。自分が、ここに可愛らしい小さな生き物を連れて来ていたことを思い出す。

 そちらに目を向けてみると、見開かれたアイス・ブルーの目と合った。珍妙な小動物の長い耳が、中途半端な位置で固まった様子は可笑しくもあり、サードは知らず微笑んでしまった。

「さてと。どこから来たのかは分からないけど、お前をここから連れ出さなきゃいけないな。おいで、外まで連れていってやるから」
「キュ……ッ」
「乗り気じゃない? でも、ここにいたら危ないんだよ」

 サードは加減に気をつけながら、嫌がるような仕草を見せた珍妙な小動物を胸に抱えた。先程の様子からすると、迷子になって怒っていた可能性が考えられて、ひとまず外に連れ出すべく歩き出した。