ようやく終われる。ごめん、先に逝くね。

 既に声帯の機能も失った少年の唇が、そう動くのが見えた。その少年は、溢れる血を拭い続ける研究者たちが見守る中、そうして静かに息を引き取っていった。

 死期というものは、きっとこういうことなのだろう。

 漠然とそんなことを思いながら、サードは自分の顔が映る鏡へと手を伸ばした。ロイや一部の生徒に指摘されたように、この銀髪も、まるで生気を失った白髪のようだと思った。

 仲間たちと違い、サードは十四歳まで身体に『ガタ』が来なかった。その反動で、遅くに始まった肉体の崩壊スピードは、あまりにも早いのではないだろうかと研究者たちは憶測を口にしていた。

 鏡に触れると、ギシリ、と身体の筋組織が軋む音がした。

「……肉体活性化、解放十パーセント」

 呟くと同時に、幼い頃から制御を覚え込まされた悪魔細胞が、定められた数値分の活性解放を始めるのが分かった。疲労感が瞬く間に消え失せ、鏡の中の赤い目が、鈍い光を灯した瞬間――手で触れていた鏡が、破壊音を上げて割れた。