胃の不快感は強くなっていたが、サードは好奇心に負けて、コンマ二秒でその生き物の前に回り込んだ。両手で包み込むように持ち上げてみると、両手の掌に収まるそれは、仔猫とは比べ物にならないほどふかふかとした触り心地だった。

「うっわ、何これ、すげぇ柔らかい!」

 思わず感激の声をもらすと、珍妙な生き物が驚いたように両耳を立てた。ダーク・ブラウンの毛並みの中に埋もれる、小さな桃色の鼻の上にあった丸いアイス・ブルーの瞳と目が合った。

「わぁ。お前可愛いし、綺麗な眼の色してるなー。なんて名前の生き物なの?」
「キュィッ?!」
「俺、サードって言うんだ。『三番目』の『サード』――あ、言葉は分からないか」

 えへへ、と思わず表情を緩めたサードは、胃の辺りからせりあがってくる感覚に我に返った。

「やばッ。ごめん、ちょっと走るけど怒るなよ」
「ピ?!」

 奇妙な生き物を片腕に抱え、サードは口を押さえてトイレに駆け込んだ。小さな生物を鏡台へ置き、手早く洗面所の水道を開ける。