「分からないことだらけで、忙しいばかりの毎日だったけど、多分俺も、そんな日々が楽しかったと思うよ」
何も悔いはないと思えるほどに、じゅうぶん過ぎるご褒美だった。
全身に流れる血が疼く気配を覚え、サードは立ち上がって窓からの景色を眺めた。
そこからは、正門まで続く広い運動場と、眩しい太陽が頭上に向かって昇っていくのが見えた。解かれることが近い封印の内側で、悪魔が蠢いているのか、獲物を前に身体の高揚感が高まってゆくのを感じた。
今は、衝動的な殺気は抑えられている。今頃、スミラギが事が始まった際に張る結界の準備をしつつ、斬首のための道具を整えているのだろうかと考えると、知らずサードの口角も引き上がった。
「委員長?」
呼び声に気付いて、サードは「なんだ?」とリューを振り返った。
「最近、生徒会との遭遇が多いようですが、生徒会長には気を付けてくださいね」
「生徒会長? どうして?」
「あの人が、委員長を目で追うのを、よく見掛けるような気がして……。俺の気のせいならいいのですが」
「視線を感じたことはないんだけどなぁ。単に嫌っているだけだと思うぞ? 副会長なんか、露骨すぎていい例だろ」
サードが笑い飛ばすと、リューは悩ましげに首を捻った。
不意に、胃の辺りで鈍い不快感が渦巻くような違和感を覚え、サードは笑い声を引っ込めた。気を抜いた拍子に、どこかの血管が軽く壊れてしまったらしい。
既に超治癒再生が始まっていたが、しばらくもしないうちに胃に溜まった血が込み上げてくるだろう。面倒だが、肉体活性化を完全開放するまでの付き合いだ。トイレで血を吐き出すついでに、また『悪魔の血の丸薬』でも飲んでおいた方がいいだろう。
そう考えたサードは、歩き出しながらリューに言った。
「ちょっとトイレに行ってくる」
背中の向こうから、リューの「いってらっしゃいませ」と言う声を聞きながら、サードは風紀委員会室を後にした。
何も悔いはないと思えるほどに、じゅうぶん過ぎるご褒美だった。
全身に流れる血が疼く気配を覚え、サードは立ち上がって窓からの景色を眺めた。
そこからは、正門まで続く広い運動場と、眩しい太陽が頭上に向かって昇っていくのが見えた。解かれることが近い封印の内側で、悪魔が蠢いているのか、獲物を前に身体の高揚感が高まってゆくのを感じた。
今は、衝動的な殺気は抑えられている。今頃、スミラギが事が始まった際に張る結界の準備をしつつ、斬首のための道具を整えているのだろうかと考えると、知らずサードの口角も引き上がった。
「委員長?」
呼び声に気付いて、サードは「なんだ?」とリューを振り返った。
「最近、生徒会との遭遇が多いようですが、生徒会長には気を付けてくださいね」
「生徒会長? どうして?」
「あの人が、委員長を目で追うのを、よく見掛けるような気がして……。俺の気のせいならいいのですが」
「視線を感じたことはないんだけどなぁ。単に嫌っているだけだと思うぞ? 副会長なんか、露骨すぎていい例だろ」
サードが笑い飛ばすと、リューは悩ましげに首を捻った。
不意に、胃の辺りで鈍い不快感が渦巻くような違和感を覚え、サードは笑い声を引っ込めた。気を抜いた拍子に、どこかの血管が軽く壊れてしまったらしい。
既に超治癒再生が始まっていたが、しばらくもしないうちに胃に溜まった血が込み上げてくるだろう。面倒だが、肉体活性化を完全開放するまでの付き合いだ。トイレで血を吐き出すついでに、また『悪魔の血の丸薬』でも飲んでおいた方がいいだろう。
そう考えたサードは、歩き出しながらリューに言った。
「ちょっとトイレに行ってくる」
背中の向こうから、リューの「いってらっしゃいませ」と言う声を聞きながら、サードは風紀委員会室を後にした。