「彼らは学院内の獲物を食いつくすと、外の人間を襲い始めます。彼らは餌のおこぼれをもらう魔獣ですので、悪魔が定めた獲物にだけは手を出しません。悪魔と戦い始めたら、あなたは彼らの『餌』の対象から外れるため、餌として注意を引くという利用価値は途端になくなりますから、今回の『強固結界』は必要になるのです」
「餌としての利用価値、かぁ……なんだか雑な言い方だなぁ」
「魔獣の数が少なければ、悪魔がやってくるまでに皆殺しすればいい話ですが、実際の頭数や、悪魔が現れるまでどのくらいの時間的猶予があるのか不明ですからね。魔術研究課が開発した強固結界であれば、Sランク級の魔物であろうと、悪魔の細胞を持ったモノだろうと閉じ込めることが可能です。――あなたも一度、研究施設でそれを見ているはずですが、おぼえていますか?」

 そう促され、サードはココアを飲みつつ記憶を辿った。そこで思い出したのは、発狂した仲間が、珍しくその場で処刑されなかった日のことだった。