「事情は分かった。それでは話を戻そう。お前は優秀な頭脳をしている割りに、想像遊びが不得意らしい」
「このタイミングで話を戻す、って『未来』とやらですか? つか、『想像』とか経験もないんですけど……」

 今日の理事長は、なんだかとてもやり辛い。

 サードは、思わず助け舟が出ないだろうか、と期待して守衛の方を盗み見た。しかし、彼らはいつの間にか定位置に戻って直立していた。

 顎に手をやった理事長が、思案するように視線を彷徨わせた。

「そうだな。たとえば身体の事情がなく、自分の身に時間が多く残されているとしたら、何かをしたいと思うだろう。近い未来でいえば、卒業もある」
「え。俺、卒業とか別にどうでもいい」
「…………」

 即答した瞬間、理事長の眼差しの奥に、射殺すような殺気が宿った。室内の温度が急激に下がったような悪寒を覚え、サードは慌てて「考えたことがなかったんですッ」と言い訳した。

「理事長である私に、それを断言するとはな」
「マジですみませんでした。口が滑ったんです、ごめんなさい」