「そうですね、悪魔の件がないとしたら……うーん。余命三ヶ月内と言われたけど、このスピードだと二ヶ月といわず身体が壊れると思いますし。今は超治癒再生がどうにか間に合って、血管とか臓器の組織が勝手に潰れても回復してくれますけど、いずれ誤魔化しもきかなくなるんじゃないでしょうか、――という『未来』しか言えないですね」

 すると理事長が、問うように眉を顰めてきた。

 サードは「触った方が分かりやすいと思います」と立ち上がり、歩み寄ってから「失礼」と告げて理事長の手を取った。ギョッとしたように彼の手に力が込められたが、構わず理事長の手を自分の腹部に押し当てる。

 そのまま理事長の手に自分の手を重ね、握りこむように腹部を掴ませた。後ろに控えていた守衛が警戒したように剣に触れたが、顔を強張らせた理事長が「大丈夫だから動くなッ」と、珍しく冷静ではない声を上げた。

 理事長の手に、自ら握りこもうとする力が働くのを見て、サードは自分の手から力を抜いた。重ねた手の下で、理事長の大きな手が内部を探るように動くのを、守衛も息を殺して見守る中――

 沈黙が降りた室内に、ぐじゅり、と鈍く生々しい水音が響いた。

 理事長が、ハッとしたように顔を上げて、サードを見つめ返す。