話していたサードは、質問に対して的確に答えられているかどうか不安になって口をつぐんだ。理事長は、無駄な話しを嫌う人だ。母親を見たのか、という返答以上の話は不要だったかもしれない。
だが、話を止めた矢先、理事長が「続きを」と短く促してきた。サードは困惑しつつも、自分の言葉で話を再開した。
「俺たちは、いつ死ぬかも分からない環境にありましたし、母体一つの命で役に立てと言われても、正直実感が持てませんでした。そのうち訓練や実験で仲間が死んでいって、結局、俺だけが最後まで残って。どうせ命を張るなら、あいつらの分も報いるついでに、研究員に恩を返すつもりでやりたいなと俺なりに思いました」
「どうして、そう思った?」
なんで、そんなところまで訊くのだろう。思うままに『自分の言葉で』答え続けていたサードは、問われて真剣に考えた。
「えぇと、そうですね。言葉で説明するのは難しいんですけど……研究所にも勤めている大人は沢山いて、全身骨折とか臓器破損も、薬とか蘇生機械でどうにかなるのに、上の人に無理言って二日も休ませてくれた人や、待機中に短いお喋りに付き合ってくれる人だとか、飛び出た内臓を戻しながら『ごめんね』って泣く人もいて。――それなら、悪魔を殺したっていう偉業を達成するような『親孝行』でもしてみようかなと、そう思ったんです」
だが、話を止めた矢先、理事長が「続きを」と短く促してきた。サードは困惑しつつも、自分の言葉で話を再開した。
「俺たちは、いつ死ぬかも分からない環境にありましたし、母体一つの命で役に立てと言われても、正直実感が持てませんでした。そのうち訓練や実験で仲間が死んでいって、結局、俺だけが最後まで残って。どうせ命を張るなら、あいつらの分も報いるついでに、研究員に恩を返すつもりでやりたいなと俺なりに思いました」
「どうして、そう思った?」
なんで、そんなところまで訊くのだろう。思うままに『自分の言葉で』答え続けていたサードは、問われて真剣に考えた。
「えぇと、そうですね。言葉で説明するのは難しいんですけど……研究所にも勤めている大人は沢山いて、全身骨折とか臓器破損も、薬とか蘇生機械でどうにかなるのに、上の人に無理言って二日も休ませてくれた人や、待機中に短いお喋りに付き合ってくれる人だとか、飛び出た内臓を戻しながら『ごめんね』って泣く人もいて。――それなら、悪魔を殺したっていう偉業を達成するような『親孝行』でもしてみようかなと、そう思ったんです」