「はぁ。そうなんですか」

 そんなことがあるとは知らなかった。しかし、所詮自分には関係のない話である。学園内で聖軍事機関へ進むことを夢見る少年たちは多いものの、サードは『縁遠い世界』すぎて共感さえ持てないでいる。

 それにしても脈絡の掴めない話だと、首を傾げた。そのタイミングで、理事長が膝の上で手を組んでこちらを見据えてきた。

「最近は、よく走り回っているようだな」
「は……?」

 またもや脈絡のない問い掛けをされ、思わず間の抜けた声をあげてしまった。最近と言えば、業務休憩のせいで大変忙しい風紀委員会のことだろう。

 休憩として取られてしまった二時間分の仕事を、他の時間に割り振って調整はしている。だが足りない人数で回しきるためには、サードだけでなく全員が走り回らなければならなくなっていた。
 
「まぁ、そうですね」

 それを思い出しながら、小さな声で答えた。

 でも驚く事に、当初覚悟していたような『長時間残業!』の事態にはなっていなかった。部員たちが残業時間を減らす工夫を自ら意見し、積極的に行動を起こすようになったおかげで、なんとかこの人数でギリギリ回せるようになってきている。