そういう話は聞いた覚えがないのだが……え、トム・サリファンって『戦いの歴史を知っている側』でいいのか? それとも、こいつらの認識が間違っていると取るべき?

 唐突に降って沸いたような話に混乱した。

 でも、彼らは皇帝と聖騎士一族らの子孫だ。その情報が間違っているとは考えにくいし、トム・サリファンが自分に伝え忘れていた可能性も浮かぶ。

 いつ指示をもらう側だ。そして、自分から動くことも許されない。だからサードは、もう頭がいっぱいいっぱいになって困惑しかなかった。

「えぇと……?」
「変だな。お前はサリファン子爵家に養子として引き取られ、名に恥ずかしくないよう教育を受けてきたと聞いているが?」

 ロイが不敵に笑い「違うのか?」と、続けて訊いてくる。

 幸運に恵まれて養子になった『サード・サリファン』は、子爵家の跡取りとして立派に育てられている設定だった。その場合、親から継承される歴史の秘密も語られていないとおかしい、という事になってしまう――のかもしれない。