考えるのは面倒なので、そういう事にしておこう。こういう相手の嫌味は、聞き流すに限る。

 サードは、心の中で勝手に納得すると、一つ頷いてから尋ねた。

「分かった。とりあえず訊くけど、お前ら暇なのか?」
「何が『分かった』のか理解出来ませんし、二言目が先程と同じですよ」
「別にいいだろ、一番聞きたい本心だ。つか、生徒会と同じように風紀委員会も『業務休憩』があるんだから、そっちのケーキはそっちで勝手に食えばいいだろ」
「ショートケーキは私物です。ちなみに私はクリームが苦手ですので、注文者であるエミルとは味の趣味が合いません」
「そんなの聞いてねぇよ」

 というか、そうか、エミルが個人的に用意したケーキなのか……

 あいつは訳が分からん生き物だよな、と、サードは腕を組んで首を捻ってしまう。昨日の見回りの際、寮に向けて歩くエミルを見掛けたのだが、またしても背中に、例の桃色の人形を背負っていたのである。

 何度見ても奇妙な光景であるのだが、周りの生徒たちは尊敬と、そして異性を見るような好意の眼差しを向けていてゾッとしたものだ。