どうしたもんかと廊下を進んでいたサードは、ふと食堂側から発生したざわめきに気付いた。それと同時に、廊下に現れた生徒たちを見て「うげっ」と顔を引き攣らせ、思わず足を止めてしまっていた。

 廊下に出てきたのは、金髪に青い瞳を持った美貌の生徒会長、ロイだった。毅然とした態度は次代の『皇帝』に相応しい威厳をまとい、頭脳、剣術において何一つ欠点が見られない、完璧な絶対君主の素質も兼ね備えた生徒会長である。彼は多くの生徒たちの憧れであり、昨年卒業していった第三王子と並ぶ人気振りだった。

 そばには、女子のような容姿をした同学年の公爵家嫡男エミルの姿もあった。生徒会長補佐に就いている彼もまた、ロイとは対照的な絶世の美少年であり、男ばかりの学園で非常にモテた。

 いや、そもそも、ここでモテるのがおかしいんだよ。

 入学当初からの疑問が脳裏を過ぎり、サードは成長途中の精悍な顔を小さく歪めた。このまま引き返してしまおうか、と、つい考えを巡らせる。